2017/1/7ポエトリースラムジャパン東京大会

ポエトリースラムジャパン東京A大会に出場してきました!

このイベントに挑戦した事は僕のキャリアにおいてとても大切なものになりました。
実際、会場を出たその時から聴くもの、見るもの、読むもの、何もかもが新しく感じられました。まるで、生まれ変わったような、初めてRapを始めた時のような、そんな気持ちにまた今一度立ち返る事ができました。

僕は、ここでははっきり、誤解を恐れず、正直に書きたいと思いますが、ポエトリーラップというものが好きじゃありません。ポエトリーリーディングというスタイルと一緒くたになっている人もいるかもしれませんが、とにかくポエトリーラップというものに関しては、僕個人の嗜好として好きじゃない。というより、ライバル、いや、負けてはいけない対象の一つです。
僕は韻が好きです。僕の信念の一つに“韻-Rhyming-は運命である”というものがあります。
そしてRapが好きです。Rapは音に対してその音をより引き立てながらflowし、そしてその音がまた言葉を引き立てて、相乗効果を生み出しているものです。
それを最近のポエトリーラップからは“自分が言いたい事を言いたいからRhymeもFlowするのもやめた”みたいなものを、全数とは言いませんが感じていました。

僕は音楽、hiphopというジャンルに属しながら“言葉”というものに関して自分なりに魂と時間を削ってきました。その時間は、自分の言葉に対する自負というか、プライドのようなものを生み出して、あらゆる言葉を扱う媒体の、どの言葉よりも力を持つものだと信じさせるようになりました。

mc battleで名を上げていく仲間や先輩、後輩達の反対側で、ひたすら時間をかけて練り、書いていくという作業は本当に孤独で、時に偏り捻じ曲がりながら、束ね、やがて一本にしていきます。

情熱は、温度差を感じると本当にウザくなります。熱かろうと、冷えていようと。
僕はいつからかその温度が近い人を求めるようになりました。

だから今回出場を決めました。
“同じ志を持つ人と戦いたい”
それが目的。

そして結果今回のスラムへの参加は、そんな僕の鬱屈していた精神を一本にまとめあげた輪ゴムというか、危なっかしい玉乗りピエロが乗っていたのは実は地球でした、チャンチャン。みたいなすごくシンプルな安心感のある答えをくれたような、とにかくそんな機会となりました。

イベントの内容に触れると、空廻は1回戦は勝ち上がり、次の準決で敗退となりました。
決勝にはRapというスタイルの出場者が2名。
優勝したのは石渡紀美さんという詩人。

その結果には全くの異論もなく、首尾本当に素晴らしい大会でした。
一番の衝撃はO.Tさんというラッパー。
僕のストロングであるはずの“Rhyme”で僕よりも遥かに一撃一撃に威力を持っていて、同じグループで戦っていて、素直に凄いと思いました。

今大会の出場者の方は大きく2つのスタイルに分けられていたような感じがします。
“文脈の中で着実に最良の流れを作りその中で言葉を落とし込むスタイル”
“文脈を重要しせず強力でスパイシーなパンチラインを投下していくスタイル”
僕は前者のスタイルです。先ほどのO.Tさんは後者。
決勝に残った4名は前者後者2名ずつ。
優勝は前者のスタイルでした(ご本人は違うとおっしゃるかもしれませんが僕はそう感じました)。

どちらが正しいとかカッコいいとかはないんです。そして本来はこんな分け方も存在はしてなくて、比率の問題なのかもしれない。
でもそこがすごく面白かった。
“面白い”

これが僕が今回得た一番大きな収穫です。

僕は飛び道具のようなただ不用意に“面白い”事を放つだけのスタイルには嫌悪感を抱いていました。
ズルいと思っていたから。浅いと思っていたから。なんとなくこれを理解しているフリをすれば“深い”と思われるみたいなチキンレース感に辟易していました。
絶対にみんなわかってない。なんとなく湧いてるだけだろうがと。塩分過多、刺激のみを求めるなんともインターネット文化な現代の若者的な表現。面白いもの言ったモン勝ち。本当は本人もわかってないで放った言葉。ふざけるなと。常日ごろ思っていました。
つまり、さっきの後者のようなスタイルが苦手だったんです。

ですが、今回のスラムでは違う印象を持ちました。それが、

“面白い”

面白かったんです。今回の後者のスタイルの方が。
僕はシュールレアリスムの絵が好きです。
それは“そうとしか表現できなかった感覚の着地点”だからなんですが、それと似たような印象を持ちました。

いや、もちろん全肯定はできません。僕はやはり前者のような表現が好きで、石渡紀美さんが高得点を取った時も大満足で、だから嬉しかった。

同じ決勝に残っていた岡野康弘さんは後者のタイプで、その方をmcの時に石渡さんが「面白いけど、もうよくないですか?」と言った時はおぉー!と湧きました。

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※訂正!石渡さんがおっしゃっていたのは、岡野さんのスタイルに対してではなく、もう以前に優勝されている事に対しての「もうよくないですか?」との事でした!誤解を生むような書き方をしてしまい申し訳ありませんでした!
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でもやはり岡野さんも面白かったんです。悔しいけど、もっと聴いていたかった。
シュールレアリスムの絵画のような、削るものがない無駄のなさがあった。

そして、もう全ての戦いが終わる頃には、前者後者問わず、参加していたほぼ全ての方に“言葉への恋”を感じて、大好きになりました。
“愛”ではなくて、“恋”。

自分のスタイルや嗜好問わず、同じく言葉と戦う者同士、言葉に恋する者同士の温かい絆を感じました。

ありがたいと心から思いました。
孤独はツライじゃないですか。
でもこんな風に言葉に恋して、振り振られしながらもがいている同士がいると思うと“負けるか!”と僕も頑張れるのです。

それとこれは言いたかった。自分の事。

今回僕は負けてしまいましたが、ダメではなかった。
今回演った作品は『drop』と『smile』。
中には9点台、しかも9.7をくれた方もいました。
8人のややウケより1人の爆笑の方がいいじゃないですか。
刺さってくれた人がいてくれた事、心から嬉しかったですし、特に『smile』という作品は訳あって音源化出来ていない作品だったから、なんとか人の前で演れて、こうして評価を頂けたのがすごく嬉しい事でした。


長々とすいません。(笑)
これからまたポエトリーリーディングに関するイベントにますます興味を持つだろうし、足を運んだり、スラムに出たりする事もあると思います。
でも僕はやっぱりアウェイの刺激が好きだし、捻くれ者だから、ラッパーが沢山参入してしまうような状況になったら引いてしまうと思うけれど、ただ今は同じ情熱を持った同士がくれた熱にエネルギーをもらいながら、さらに成長していきたいと、そういう風に思いました。

さて!また次に行こう!


                                                                      空廻