『地獄で笑え』解説⑲

『Tasogare』解説

僕は迷ってばかりで、

それでも一直線に何かに向かって進んでいる感覚だけはわかる。

 

何か意思表示をしたり明確に提示することは、カッコイイけど、疲れる。

 

僕は夕焼けが好きで、夏が好き。

 

それくらいしかはっきり言えない。

 

でもその曖昧さは、実は優しさであったりもする。

と、いうかなんとも居心地が良い。

 

世界は、実は今生きて進行している世界と、

並行して無限の世界が存在しているらしい(ジョジョの奇妙な冒険 第7部『スティールボールラン』ファニー・バレンタインいわく)。

 

僕は一人しか自分を動かすことができないから、その無限の選択肢の内の1つの方向しか進むことはできないけど、

この向こう側で無数の自分が、代わりに無限の可能性のパターンを生きているのだろう。

 

同じように、自分以外のこの世界の人々は、それぞれひとつだけ動かせる自分の意志と身体を使って、

僕が選択できなかった人生を歩み、知識や経験を得て、それをなんらかのカタチで僕に教えてくれている。

その逆もそう。

今の自分の人生は、誰かが選択できなかった人生。

 

 

そう思ったら迷っていたことが、うんと減ったんです。

 

 

黄昏は太陽の夜の憧れで、

太陽は美しく、強く、光そのものだけど、

時には夜の静かな闇に憧れるのだろう。

結局はないものねだり。

 

もし、今の自分の人生が好きじゃなかったりツラかったら、

いつでもフィクションの力を借りればいい。

 

僕はラッパーだから、曲を使って雨の日も晴れにできるし、

いろんな人生を作り浸ることができる。

 

「Hiphopはリアルじゃないと」というStanceはとてもカッコイイしそれも正しいと思うけど、

この世界にあるものは、どうせほとんどがフィクションや、思い込みであるとするならば、

自分で作り上げたフィクションもまたリアル。

 

曖昧であればこそ耐えられることもある。

それでいい。

それは時に優しさで、

黄昏時の気持ちの変化や、

季節の変わり目の体調の変化も、

感受性がやたら過敏になるのも、

今は休んでいなさいと誰かが言ってくれているようで。

 

だってどうせ僕たちは次に進んでいく。

今は答えを無理に出す時期ではなく、

ただ声を聞く。

祭囃子は後方へ消えていく。

 

 

『Tasogare』

 

遠くボールを投げていくよ。

公園じゃ禁止だから脳内のイメージの黄昏に。

ここ最近胸中を蝕むエモさ

重たげに抱えて野暮用からの帰り。

 

正直食欲をなくしているせいで少食気味で遠のく生命活動維持。

死ぬほど寂しくてあったかい光 求めてるくせに向かうは全然逆の道。

 

 ねぇ、なんでそんなステキに笑うの?君は。

のんびりな俺には眩しい程に元気だ。

現金は持ってないし、火遊びは厳禁な俺なんかつまんなくね?

恋なんて迷信さ。

 

死に物狂いで鞄の中に集めた価値観を一度も古いだなんて思った事はなくて。

遠出が苦手なバックパッカー。

ラップばっかやってるとどこでもどこでも行けて楽なんだ。

 

1・2・3 

3拍子で揺れていく秒針が支配してる世界の猛烈な狂信者。

上品さシカトした方が調子いいんだ。

真似はしないけどさ憧れていたクレヨンしんちゃん。

 

世界の反対側を一緒に観に行かないか?と耳にサファイヤをつけた科学者が訊く。

“ようこそ量子力学の世界へ”と言ったと同時に開くドアの向こうが常識になる。

 

僕は、どっちにもいるから。

君のいる側の向こう側で

君が出来なかった事をするから。

安心してよ。ラップばっかやっていたおかげで

どこにいても、どこにでも僕は行けるんだ。

 

ほらね。

 

思いついてたどり着いた公園でchill。

余計なもんはいらないって証明出来る。

ヘルメットかぶりながら自転車を練習する

少年を見つめてるお父さんも熱中。

 

しりとりみたいに君と父としての自分が連続して現れる。

大丈夫。また会える。

夕方が長く続く夏が好きだ。

8月にはもう寂しくなるくらい夏が好きだ。

 

 

遠くの祭囃子も消えて、カラフルな灯りと生温い風。

こんな知らない街を歩くのが楽しいって知らなかったんだ。

 

hey

モヤモヤとする心に除湿機を取り付ける事を試みるも落ち着き

“ぼんやりしてるから保っていられるんだ”と

朧月夜眺めながら楽しむ散歩道。

 

僕を好きと想ってくれる人のありがたさ。

だけど不器用で今の僕じゃ間に合わない。

黄昏は太陽の夜の憧れさ。

しょうもないアホたれさ。じゃあ行くね。